いつか見た光景 〜 終話 〜
タバコをふかしながら、夜空に輝く星々を見上げている。
『みなが平和なときを刻み安らかな眠りにつく今日でありたい。
幼子が聖母に抱かれ安らかな眠りにつく夜があるように。
疲れた狩人が火を絶やさず、静かな眠りにつく夜のように』
「ね~、なに考えていたの?」
「結婚のこと」
「誰と結婚するの?」
「決まっているだろう」
「そうだよね、リョウ君には私しかいないもんね」
「そんな大切なこと、人には言えない。特にお喋りな人には」
「え〜、ムカつく〜。誰? 白状しなさいよ。誰なの」
「今、ムカついているドクター」
「やっぱ。あ〜、安心した」
「単純でいいね。本当、分かりやすい」
「普通の生活って、どんな感じなんだろう」
「分からないわ。あなたに着いて来ちゃったから」
「サラリーマンの男と結婚していれば、幸せだったかもよ」
「幸せよ。初めて恋をした人とずっと一緒に居られて」
「今度、帰ったら、二、三年日本にいようかな」
「どうしたの?でも、無理ね。あなたが我慢できるわけないもの。苦しんでいる人達が待っているよ」
「でも、君と一緒に暮らしてみたい」
彼女とは幼い頃からの付き合いだ。