いつか見た光景 〜 叶えられる未来
僕らは最期の時を君が泣いた渡り廊下で静かに迎えている。
星々の美しい冬空の下、肩を抱き唇を重ね。
終焉はスローモーション。
探し求めた君との過去や記憶より長かった時間も存在した。
全てがもうすぐ消える。
死に絶えた恒星が放した光は全ての過去と今を飲み込み、輝き続けながら宇宙の果てに向かう。
過去しか存在しない宇宙。
いや、過去すら存在しない。
時は、過去を過去が消し続ける。
僕はなにを求めたのだろうか。
二人の女性を愛した。
日々を過ごした妻。
最期の温もりと死を共にする君。
確かなものはなかった。
「時が来たね」
君がうなづく。
自然の摂理に従えば、いつかこの宇宙は消滅する。
もし、全ての条件が一致したビックバーンが新たな宇宙を創造するならば、同じ過去をたどる。
地球の同じ時刻に同じ場所に生命(いのち)を授かる。
僕が望むことは、二人の願いが叶う宇宙がすでに生まれていること。
何十億光年後に叶えられる未来。
ながい眠りに就こう。