いつか見た光景 〜 交差した時空 〜
何故、君を感じたのだろう。
出張返りの成田エアポート第一ターミナル。
疲れ果てた男の本能か。
君も振り返える。
僕のキャリアケースに何かを探している。
視線を合わせた君の瞳にあの頃が映り出される。
君は何かを伝えようとしている。
僕はその思いを探している。
名刺を渡し、家路に着いた。
幸せそうな家庭がそこにはあった。
これから、ニューヨークへ旅立つのだろう。
きっと楽しいバカンスが待っている。
言葉を交わすことはなかった。
我が家で身体を休めたかった。
「お土産はなに?」娘が駆け寄る。
「先にお帰りなさいだろう」たわいの無い、いつものやり取り。
「お疲れ様、夜はお寿司よ」妻がねぎらうように迎えてくれる。
いつも以上に癒されたい。
しかし、君だったのか。
それが、僕の全てを支配している。
しばらく仕事に忙殺され君のことを思い出すことはなかった。